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『燐火』 .。.:*連載 ブログ小説・゚☆.。.:*・ 第五部「勘太郎」--第四話




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ブログ小説 『燐火』 ~第五部「勘太郎」第四話~
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~第五部「勘太郎」第四話~


(昔の時代。勘太郎と母親“のあ”、嫁“うい”の物語)

のあ:勘太郎、留守を頼みますよ。

勘太郎の母親“のあ”は、そう言うと足早に野々村の家を後にした。

勘太郎の嫁“うい”は出産のため、里に帰っていたが、男子が誕生したとの知らせがあった。
野々村家にとっては、待望の跡取り。一刻も早く、この目に収めたい。

のあが婿養子を取り、どうにか野々村家を存続させたという経緯もあり、のあは家を守る厳しさを知っている。
それだけに、跡取りを産むことは、この時代の女にとって、最も重き役割となる。
そしてそれがその女の価値ともなった。

既に父は他界し、野々村の家を守る勘太郎にとっても面目が立ち安堵した。しかし…

“のあ”が“うい”の生家に着くと、そこには赤子の泣き声はなく、すすり泣く声しか聞こえない。

ういは、床に伏せっていた。

のあ:“ういや”

うい:お母様…

やつれた“うい”は、やっとのことで起き上った。

のあ:ややはどこぞに?

うい:お母様、ややが、ややが‥

その一言が精いっぱいで、あとは声にならなかった。

子供は生後高熱が続き、不憫にも三日で息を引き取った。この時代では決して少なくないことではあるが、期待が大きかっただけに“うい”の心境は耐え難いものであった。

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(今の時代。新之助と山手の物語)

山手鉄蔵:いやー厄介な仕事ができましたなー。野々村さんご存知でしたか?

野々村新之助:・・・・・

山手:そうですよね、知りませんよね。んん?野々村さん!

山手は、新之助の肩を揺すぶりながら、
野々村さん!どうされたんですか?また女郎のことですか?

新之助:シ!声が大きい。山手殿、この間の話しだが…

山手:金のことですか?それなら申し訳ないですが…。

新之助:そうか…。

山手:いや、だって、そんな大金持ってたら、仕事しませんから!奉行所なんて辞めちゃいますよ。ここ最近田中様に怒鳴られてばかりで本当に嫌ですわ。
ほんとに大金持ってたら、侍やめて、”みうめ”とこう…  

あれー!?野々村さん!行かないでくださいよー!


山手:賭博の下調べに参りましょう!ああ、いいなー賭博、そんな遊ぶ金があったらなーハハハ。

新之助:山手さん賭博って、どのくらいの金が動くのでしょうか。

そうですね。場にもよりますね。まぁ私らの安給金の何十倍、何百倍もの金が動くのは確実でしょうが。あたしもバーンと儲けてみうめと、ハハハ。


ちょっと野々村さん!また、待ってくださいよー。冗談ですよ、博打は御法度、やりませんよー。野々村さんも変な考え起こさないでくださいよー。
無理無理、勝てないようになってるんですから!


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(今の時代。新之助と”りん”の物語)

りんは、慣れない生活で、すっかり萎えていた。体調も悪く、日に日にやせ細っている。

りん:新ちゃん、あたし母に会いたいの。一生ここから出れないのは、やっぱり嫌。
身を売ったときにあれほど決心したのに…。

人って、人との結びつきが大事なのね…。横になりながら、弱々しく笑った。

新之助:ああ…。

りん:新ちゃん。

なんだ?


何を考えているの?最近、何か考え込んでいるみたい。あたし、何もできないけど、聞いてあげることはできる。言ってみて…

か細い声で、それでいてしっかりとした口調で、つぶやいた。

(新之助、心のつぶやき):りんは、こんなひどい境遇になっても、他人のことを思いやることができるのか…

どんな仕打ちをされても、俺のことを考えてくれるのか!

誰を恨むでもなく、自分の中のぎりぎり精一杯で生きている。

新之助:なぁ“おりんちゃん”。一緒に住まないか。

え…

夫婦にならないか?


新ちゃん…

嬉しい

でも、あたしは女郎。借金だって一生働いても返せるかどうか。。。

到底ここから出られないわ…。
気持ちだけでも嬉しい。


心とは裏腹に気丈に振る舞うりん。そんなりんを新之助は愛おしく思えて仕方ない。

もしかして、ずっとそれを考えていてくれたの?だったら…。
だったら、とっくに夫婦よ!

あたしにとって、新ちゃんはとても大切なお方。あたし、夫婦って、一緒に住むことだけじゃないと思うの。心と心が結びついて初めて夫婦だって…

しんちゃんとあたしは、心と心がつながっているの!
あたし、体は買われても、心までは買われていないの。だから…


新之助は健気な“りん”が愛おしく、思わず抱きしめた。強く。

おりんちゃん!

新ちゃん!

初めて抱いてくれたわね。

嬉しい。



新之助の太い腕にあたたかい雫が滴った…


第五部「勘太郎」--第四話 終わり


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  1. 2012/11/07(水) 00:15:48 -
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